『私はこう見た、 CancerX Summit 2020 ~患者編~』




山梨富美、日産自動車株式会社、ブロガー





 私自身、第二子妊娠中に乳がんが再発転移(ステージ4)したサバイバーであり、「がんと言われても動揺しない社会へ」というタイトル、そして発起人の一人が私を救ってくれた”マギーズ東京”の鈴木美穂さんということで、これは行かねばと昨年のCancer X 2019に引き続き、今年も参加しました。

 10年以上前のがんに罹患した美穂さんが当時パニックになった様に、今でも多くの人が告知を受けた時に同様のショックを受け、孤独になり、不安になっています。なぜなら、がん=死、治らない、治療が辛い、というイメージが未だに強く刷り込まれているからです。

 不安というのは、知らない、わからない、どうなるのか見えない、ということから起こります。そしてそれを知っているサバイバー達は様々な活動を通して、そんな世の中を変えてゆこうと奮闘しています。そんな活動をしている方々の多くの熱気と、私も少しづつでも発信し続けることに、意義があるなと、そしてまだまだできることがあるのではないかとたくさんの気付きを得られたCancerX2020でした。


 昨年に引き続き、「情報」のコーナーはとても興味深く聞かせていただきました。がんについて知らずに、急に当事者になると、多くの人はネット検索や書籍を探したりします。そんな中、人は優しくて(生きられるかもという希望を抱かせる)易しい(自分にもできそう)情報に吸い寄せられるものであり、結局身近な家族などに「にんじんジュースがいいよ」と強く勧められると信じてしまうものである。という、しくじり先生と自身でおっしゃっていた轟浩美さんの発言には響くものがありました。

 標準治療で治らない病気もあるけれど、代替療法で治る場合もあるのかもしれないけれど、安易に標準治療以外のものを信じ、それだけで治そうという道を選ぶ人が少しでも減る様に、発信する側も意識をしなくてはいけない。また、自身のしくじり経験を話す方が増えてゆくこと(多くの人はしくじり経験と思いたくないと思いますが)、そして発信してゆくことが何よりも強い啓蒙につながると感じました。

 また、佐藤尚之さんの話の中で、普通の人は膨大なネット情報の中で迷子になるし、正しい情報を発信すれば届くと思うのは間違いで、正しいだけでは届かない、ということを前提に、情報には共感、感情をまぶし、人の弱いところを補完して発信しないと届かない。

 また、9割の国民には、オールドメディア(テレビ、ラジオ、新聞)で伝わるんですよ、とネットでの検索数の府県別チャートを見ると、東京がずば抜けて高く、その他の府県は東京の約半分、SNS利用者の2割がヘビーユーザーで、彼らが総利用時間の8割を占有しているという情報には、ハッとするものがありました。

 東京に居ると、普通だと思っていることは普通ではなく、逆にすごく狭い視野になってしまっていることもあるんではないかと。特にがんという病気は年配の方の罹患率が高い中、ネット上でどんなに正しい情報を発信したとしても、本当に必要な人には届きにくく、そして、結局家族や友人の情報が、専門家や有名人の言葉よりも信頼されるという現状を招いているんだなと。

 私が闘病中にたまたま出会ったブログという発信ツールに現在でも2万人弱のフォロワーの方がいらっしゃって、たまたまブログを読んでくださる方が居る。そして、読んだ方が間違った情報をご家族や友人に伝えない様に、読んでくださる方だけにでも正しい情報、事実を伝えられるようにしたいなと、改めて思いました。

 また、「働く」のコーナー、分科会も自身に深く関わるテーマとして興味深く参加しました。私自身も再発という不安と闘いながら、昨年育休を終えて復職しましたが、復職できた喜びでフルスロットルで働いたら、帯状疱疹になり、精神的に不安定になってしまう時期がありました。がんサバイバーであることを忘れられる喜びと同時に、忘れてはいけない現実があることを実感しました。

 今後もし再発した場合、どうやって治療しながら働くのか、ということを、知っておくことが不安の解消に繋がると思いましたし、働ける現実を知っていれば、告知を受けて「迷惑をかけられない」「仕事どころじゃない」と仕事を辞めてしまう”びっくり退職”も減るのではないかと。

 会社にガンの罹患を伝える人は約25%(昨年のCancerXより)、びっくり退職した方の約7-8割が後悔しているという事実も、がんという病気に関するイメージ、情報がまだまだ正しく伝わっていない現状を表していると思います。

 闘病しながら働くためには、会社の制度もしかりですが、上司や同僚の理解、制度を利用する風土、そして患者本人の意思が大切で、そして両立している人が、世の中に発信してゆくことも、また重要なのだなということを、分科会で気付くことができました。


 今年も、様々な活動がCancerXを通じて、コラボレーションをし、拡散して発展してゆく未来を感じました。がんという病気をきっかけに、がん以外の病気も、そして障がいや、介護、育児、LGBT、SOGIといった様々な状況を抱えた人が生きやすい、働きやすい社会というのが早く訪れるように、できることを、できるうちにコツコツと実行してゆこうと、改めて考えたのでした。

今回もすばらしいイベントをありがとうございました。

ブログプロフィール
https://ameblo.jp/pumiy0705/entry-12407431354.html
CancerX 2019
https://ameblo.jp/pumiy0705/entry-12437869268.html
CancerX 2020
https://ameblo.jp/pumiy0705/entry-12572682151.html

コメント